追放されたチート魔導師ですが、気ままに生きるのでほっといてください
 彼女が愛用しているキャスケット帽も、帽子からこぼれ落ちる雪のように白い癖っ毛の髪もすっかり汚れてしまっている。

 そんな無邪気なプリシラの姿を見てクロエの顔が綻んでしまうのは仕方がないことだろう。

「おいおい」

 ──と、突然子供のような声がした。

「なぁに鼻の下伸ばしてんだよ、クロエ」

「……っ!? ルル!?」 

 その声の主は、するするとプリシラの肩に登ってきた小さな猫のような動物だった。

 垂れ下がった耳は猫というよりウサギに近く、白銀の尻尾は大きくふさふさとしていてかなりのボリュームがある。 

 この奇妙な見た目のルルは、猫でもウサギでも、ましてや動物でもなかった。

 彼はプリシラたちの故郷「シュラウべの森」に古くから住んでいる「森の大精霊」で、プリシラの親代わりでもあるのだ。

 ルルは目を細めて訝しげにクロエを見る。

「どうせクロエのことだから、『今日もプリシラちゃんは絶好調の可愛さだねえ。星三つです!』なぁんて下らないことを考えてたんだろうけど」

「……っ!? そ、そ、そんなこと考えてないから!」

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