追放されたチート魔導師ですが、気ままに生きるのでほっといてください
 顔を真っ赤に火照らせたクロエは必死にかぶりをふる。

 少し気まずくなったのかクロエはチラリとプリシラを見たが、彼女はクロエたちの会話に全く興味がないのか鼻歌を歌いながら朝食の準備を続けていた。

 安心したような悲しいような、複雑な心境に陥ってしまったクロエ。

「……ん?」 

 そして、クロエが見たのはプリシラの手に握られたいくつかの瓶だった。

「……プリシラちゃん、それって『塩漬け』だよね?」

「え? そうだけど?」

「何の塩漬けなのか教えてくれるかな?」

「サロだよ。ヘンウェンのサロ」

 それがどうしたの、と言いたげに首を傾げるプリシラ。クロエはプリシラに悟られないように、やりきれない想いを笑顔の下に隠した。

 サロとは豚の脂身を使った燻製のことを指す。

 塩気が効いていてそのまま食べても美味しいが、薄く切ったサロをニンニクと一緒にライ麦パンに乗せて食べると頬が溶けてしまうくらいに旨い。   

 しかし、プリシラが言う「ヘンウェン」とは、ただの豚ではなかった。

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