追放されたチート魔導師ですが、気ままに生きるのでほっといてください
 瞬間、テントの空気が一気に張り詰めたのはローエンの怒りが爆発したからというわけではない。ローエンの本能が、ニーア・ナルバリッチという男を畏怖しているのだ。

 吊り目に吊り眉、白いメッシュが入った赤い頭髪──

 その恐ろしい見た目通りにナルバリッチは戦闘能力も規格外で、討伐隊に多大な被害をもたらした魔獣ぺリュトンを一人で討伐している。

 プリシラは知らなかったのだが、彼は傭兵たちの中では伝説的な人物で頭髪の白メッシュから「白狼」の二つ名を持っているらしい。つい「ダサい名前だなあ」と思ったが、流石に怖くて口に出すことはできなかったが。

「ど、どういうつもりだナルバリッチ」 

 まさか拒否されるとは思っていなかったのか、ローエンがたじろぐ。ナルバリッチはため息を添えて答えた。

「お前も知らないわけねえよなローエン? 魔女を縛り首にできるのは、魔女に殺される覚悟がある人間だけだ」

 ひゅっとローエンが息を呑んだ音が聞こえた。

< 7 / 85 >

この作品をシェア

pagetop