手錠、そしてキスの雨を
「おはよう、気分はどうだ?」

目の前に立っていたのは、伏黒さんだ。手錠を私につけたのも彼だろう。そう思うと、一気に怖くなって後ずさってしまう。

「どうした?そんなに怯えなくてもいいだろ?」

私が怖がっているとわかっているからか、伏黒さんはニヤニヤしながら近付いてくる。私の体が壁に触れた。目の前には伏黒さんがいるから逃げられない。わかっていても、目をあちこちに動かして逃げ道を探してしまう。

「逃げるとか無駄なこと考えんなよ」

伏黒さんがそう言い、私に手を伸ばす。咄嗟に私は「来ないで!」と言い、自由な足で伏黒さんを蹴ろうとしたものの、その足は避けられ、伏黒さんに抱き締められてしまった。

「や、やめて!離して!今日も仕事があるんだから!」

必死に身をよじるも、両手を拘束された上に男性に抱き締められているんだからこの抵抗は無意味だ。それをわかっていても、恐怖から抵抗を続ける。

「こんな状況でも仕事ってお前の頭ん中どうなってんだよ」
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