聖女としてきたはずが要らないと言われてしまったので、異世界でふわふわパンを焼こうと思います。



「すみません。異界からやってきた方ですか? エレットでは異界の人間を“旅の人”と言うんです」

「そちらの国には、異界からやってきた方がいらっしゃるのですか?」

「はい、エレットにはなぜか異界人がやってくるゲートがあるのです」


 異界人……私と同じ故郷の人がいるのかもしれない?


「正しくどのくらいいるのかはわかりません。ですが、旅の人の末裔もいらっしゃいます。私が知っているのは三人ですが」

「そんなにいらっしゃるのですか?」

「はい、そうなんです」


 そっか、同じ空の下にそういう人いるんだな。そう思ったらとても嬉しくなる。


「……会いたいですか?」

「そう言うんじゃないんですが、なんだか安心して……素敵な話してくださってありがとうございました」

「いえっ、私はそんな……ですが喜んでいただけて嬉しいです。こちらこそありがとうございます」

「今夜、楽しみにしていますね」

「ありがとうございます」


 そう言うと、王子様は微笑み退出していった。


「メル様、ありがとう。副団長と仲良くいらっしゃってくださいね」


 リー様にそう言われ、今日のお茶会はお開きとなった。彼女が嫁ぐまであと一週間、あと何回リー様とお茶ができるのかな。






 

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