聖女としてきたはずが要らないと言われてしまったので、異世界でふわふわパンを焼こうと思います。
「メル、今からは自由だ。食べに行こう」
「はい!」
立食パーティーのように綺麗なテーブルに料理が並べられていて、美味しそう。さすが、王宮……キラキラしてる。
「ケーキも食べようか、王宮の専属菓子職人のだからうまいよ」
「楽しみです」
ギルバート様と一緒にケーキを取りに行こうとすると、歓声が上がった。その中心にはリー様とウィリアム王子がいる。
周りから「あれが婚約者のウィリアム王子ね、かっこいいわ」「美男美女でお似合いね」と言った声が聞こえる。本当に美男美女……。美男美女って言葉は二人のためにあるんじゃないかと思うくらいに。
「挨拶に行かなくていいんですか?」
「これだけ人がいたらいけないだろうな……お二人の姿が見られたし、そろそろ――」
ギルバード様の声を遮るように「キャァ――!」と叫び声が聞こえた。その声の先には、倒れている男性とその男性を揺さぶる女性……それはウィリアム王子とアイリーン王女だ。
私が何も出来ずにいると、会場内は黒いモヤに包まれる。