聖女としてきたはずが要らないと言われてしまったので、異世界でふわふわパンを焼こうと思います。
「結構危険な状態だ」
「私、死ぬんですか?」
「いや。死なない……私が助けることもできる。君は異界人だからな」
へえ〜……ならなんで私はここにいるんですか。
「じゃ、治してよ」
「それはいいんだが、君を治療すれば故郷には戻れなくなる」
「故郷って、日本? この世界に来た時点で帰れないんじゃ?」
記述でもそんなこと書いてなかった。
「いや、帰れる。他の聖女がそうしなかっただけだ」
「帰った人はいないってこと?」
「私の記憶の中ではいない。もし、戻ったらこの世界のことは全て忘れる。実際、今あっちの世界では行方不明として存在している。こちらにいると言うなら、あっちの世界では“双葉メル”という人間は存在自体なくなる」