聖女としてきたはずが要らないと言われてしまったので、異世界でふわふわパンを焼こうと思います。



 私がそう言うと、パァっと笑顔になったアルベルトさん。彼は「あ、そうだ!」と私のことを見つめる。


「え? 何?」

「アルって呼んでよ。師匠が弟子にさん付けはおかしいだろ」


 確かに……。だけど呼び捨てはハードルが高いんだよなぁ。


「嫌?」

「ううん! 嫌じゃないよ……アル」

「良かった、改めてよろしくね」


 そうだ、オスマンさんとエミリーさんに謝らないと。


「旦那様と奥様に顔見せないと。あと、ギルバート様にもね」

「うん……」


 だけど私、ずっと好きなことやっておいてもらっているってただの居候じゃん……。

 成人しているのに、ただで衣食住を提供してもらうのはダメだよね。でも私に出来ることなんて――いや、待てよ?


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