聖女としてきたはずが要らないと言われてしまったので、異世界でふわふわパンを焼こうと思います。
アルくんが厨房から出て外へ行くと入れ違いで庭からギルバート様がやってきた。
「メル、こんにちわ」
「ギルバート様、はい。こんにちわ」
「美味しそうな匂いがする。お得意のパンかい?」
ギルバート様は口角を上げるとそう言った。
「はい。ギルバート様も食べますか」
「ああ、いただこうかな……」
私は一番大きそうに見えるベーグルをとってギルバード様に手渡した。
「メル、明日休みなんだが……一緒に王都の街に行かないか?」
「王都にですか?」
「ああ、メルが良ければだが……」
ギルバード様は、少しだけ目を逸らした。よく見ると耳が真っ赤で可愛い。こんなに顔が整っているのに、ふふっ……。
「喜んで! 行きたいです。ギルバード様、案内お願いしますね」
「ああ。任せてくれ……」
「楽しみです」
王都って私が追い出されたお城の近くの街だよね。あの時は余裕がなかったけど、エミリーさんに色々教えてもらったし楽しみだな。
ギルバート様はそれだけ言うと裏口から出て行ってしまった。もしかしてそれだけの為に帰ってきてくれたのかな……