聖女としてきたはずが要らないと言われてしまったので、異世界でふわふわパンを焼こうと思います。
「……美味しかった。ありがとう」
「いえ。あっ、私パンを作らせていただけることになったんです」
「そうか、よかったな」
「はい! お昼だけだからギルバード様には食べていただけないのは残念ですが」
ギルバード様は、ほとんどお昼は帰ってこない。休日でも夜しか食事にはいない。
「昼か……次の休みには君のパンを食べに帰ろう」
「え? お忙しいのでは……?」
「大丈夫だ、絶対帰る」
そう言い切ったギルバード様は紅茶を一口飲んだ。
「メル、そろそろ帰るだろう? 馬車のあるところまで送ろう」
「はい。ギルバード様忙しいでしょう? エミリーさんに馬車が停まっている場所は聞いてますし、もしわからなかったら人に聞くので大丈夫ですよ」
「……俺に送られるのは嫌なのか?」
「そっ、そんなことありませんよ! でも申し訳ないなって」
今だってお忙しいところをお邪魔してしまったし……