聖女としてきたはずが要らないと言われてしまったので、異世界でふわふわパンを焼こうと思います。
私がワタワタしていると「父上、メル嬢が困ってますよ」と言う声が聞こえてきた。その声に国王陛下が頭を上げる。
「ノア」
その声の方を向くと、ギルバート様ともう一人……国王陛下が“ノア”って呼んでいたってことは……もしかして、
「やぁ、メル嬢。私、第一王子ノア・エリザベス・エミベザと申します。王宮騎士団の団長をしております」
「あっ、はい。はじめまして、メルと申します」
「畏まらないでくれ、私も謝らないといけない。愚弟が本当にすまない……」
「いえっ、頭を上げてくださいっ」
なんで私は、この国のトップの方々に頭を深々と下げられているんだろう。これはどうしたらいいの!?
「レクサスもノアくんも、もう頭を上げたらどうだい?」
「そうねぇ、逆に可哀想よ? ね? さ、座って」
オスマンさんとエミリーさんがそう言うとふたりは座った。するとギルバート様が私の隣に来た。