聖女としてきたはずが要らないと言われてしまったので、異世界でふわふわパンを焼こうと思います。
「私は、親友のお気に入りの子に手を出したくはありません」
「……っ!? な、何言って……」
「本当のことだろう?」
「だが……っこ、こんな場でっ」
ギルバート様はワタワタして顔が真っ赤になっている。というか、ギルバート様にはお気に入りの子がいるんだ……
「……ギルバート様とはもう、お出かけ出来ないんですね」
「……ぇ」
「お慕いされてる方がいらっしゃるのでしょう? なら私といたら勘違いされてしまいますよ……」
私といたら、見方によっては恋仲だと思われてしまう。それだけは避けたい。
「メルちゃんって、実は鈍感?」
「え?」
「メル……俺が、君のこと好きだと言ったらどうする?」
え……? ギルバート様が、私を好き?
そんなありえないよ。
「ギルバート様みたいな素敵な方が私を好きになるなんてあり得ません! 私みたいな平凡な容姿に、パンを作るしか出来ないですし……」
なんか自分で言って虚しくなってきて俯いてしまった。
私が俯く中、ギルバート様が私以外の人に憐れみの目を向けられているなんてこの時の私は知らない――……。