聖女としてきたはずが要らないと言われてしまったので、異世界でふわふわパンを焼こうと思います。
「――っ」
目が覚めると、見知らぬ部屋にいた。あれ……私、確かノア様に話があるって言われたんだよね。それで付いていって……なんか、頭痛い。
「……あれ起きたの?」
誰、この人。
「ノア様は……?」
「本当に騙されてるんだ、さすが異界人……いや、聖女様」
私が、異界人だってこと知ってる。知ってる人は少ないはず……それに私が公爵家にいるなんて知らないよね。
「なんでって顔してるな、そりゃ探したからな」
「……えっ」
探したって……どういうこと?
すると、部屋に入ってきたのは王子。ノア様じゃない方の――王太子・ジーク。私が召喚された時、『聖女じゃないから要らない』と言った張本人だ。