聖女としてきたはずが要らないと言われてしまったので、異世界でふわふわパンを焼こうと思います。
「……なるほど。ありがとう、メルちゃん。答えを言うと、聖女と言うのは魔を祓う力を持つ乙女のことだ」
「魔の力……?」
「あぁ、瘴気によって汚れた世界を浄化してくれるといわれている。あと、召喚の儀で呼ばれたんだよね? なら、帰る方法は分からない」
そうか……もう帰れないのか。
「そうだ、お腹空いてないかい? この先にある村でご飯食べようか」
「ご一緒してもいいんですか?」
「もちろんだよ」
元の世界には帰れない。
それはもう、お父さんにも会えないしお父さんのパンも食べれないってことだ。
「ありがとう、ございます」
「あぁ。私の家には妻と息子がいるんだ。息子は君と同い年くらいで――」
オスマンさんは移動中いろんな話を聞かせてくれたけど、ポッカリと開いた心は埋まることはなかった。
その後、ご飯屋さんに寄ったけどお腹は空いていなくて何も食べなかった。