聖女としてきたはずが要らないと言われてしまったので、異世界でふわふわパンを焼こうと思います。
「呼んでくる、今詰め所にいるはずだ。待っていてくれ……すぐ戻る」
「えっ」
ギルバート様の動きは早かった。あっという間にノア様を連れて戻って来た。
「……メル嬢、この度は面会をお許しいただき感謝いたします」
ノア様は片膝を付き、頭を下げた。
「ノア様、頭を上げてください……」
「寛大なお言葉、感謝いたします」
「私は……怒ってないですし、私の方が申し訳なくて。騙されてついて行った私も浅はかでした。手を煩わせてごめんなさい」
私も頭を下げた。
ノア様やギルバート様は全くもって悪くない。謝られることを二人はしていないのに……
「お顔を上げてくださいっ私たちの考えも甘かったのです。すべてを公爵邸の方々に任せきりで……もっと警戒するべきでした」
頭を上げると本当に後悔しているのがわかる表情をしていた。
「ノア様……じゃあ、ギルバート様が作ってくださったパンを一緒に食べましょう?」
「えっ」
「ダメ、でしょうか……」
王子様だもんね、毒見が必要なのかも……そんなこと考えてなかった。
「ダメじゃ、ないです。食べます」
「良かったです! 食べましょ!」
ノア様もギルバート様も椅子に座って一緒に食べた。みんなで食べたパンは本当に美味しくて、食欲がなかったはずなのに全て食べることができた。