聖女としてきたはずが要らないと言われてしまったので、異世界でふわふわパンを焼こうと思います。
「何か心配事でもおありですか?」
「噂で聞いて……ギルバード様には縁談が持ち上がっていて、お相手の令嬢がギルバード様のことぞっこんだと詰所にも通われているとお聞きしました。それにとても麗しい方だと」
「まあ……! どなたからそんなことを? わたくしから見たら、ギルバード様はメル様に超が付くほどにぞっこんだと思いますわ」
「そんなことは……」
たくさんのご令嬢がいる中で私なんかにぞっこんだなんてそんなわけない……
「メル様が見るギルバード様の印象聞かせてくださいます?」
「え? 印象ですか……とても優しくて表情豊かで、私のことを心配して休みの日には公爵家まで会いにきてくださいました」
「私の知っているギルバード様って、無表情で仕事人間。何を考えているのか全く読めない。ご実家にも中々帰ることはなかったのです」
「別人ではないですか……?」
彼が無表情だったことは一度もないし、たまに照れて耳を赤くされる姿は本当に可愛らしい。