聖女としてきたはずが要らないと言われてしまったので、異世界でふわふわパンを焼こうと思います。
恋人がどストレートです
「――メル様? 手、止まってますけど」
「……え、あっ」
私は、朝早くから離宮にあった簡易的キッチンでシフォンケーキを焼こうとメレンゲを作っていた。
「どうかされました?」
「いや、あの……ギルバード様とどんな顔で会えばいいのか、と思って」
あの日、――告白された私はどうやって過ごしたのか思い出せない。というか恥ずかしくて思い出すたびに真っ赤になってしまう……。
「メル様は本当に可愛らしいですね。ふふっ」
「わ、笑い事じゃないのよ! 私は真剣に悩んでいて……どうしたらいいのか」
「いつも通りでいいんじゃないですか? 副団長様もきっとそう思われますよ」
そ、そうなのかな。でも、その“いつも通り”がどんな風だったのか思い出せない。