恋に異例はつきもので
 部長は笑みを浮かべると、わたしの手をポンポンと叩いて立ち上がった。
「さてと。今日はここまでだ。家まで送っていくよ」
「えっ?」

 部長はわたしの顔を覗き込んできた。

「なんだよ。期待外れって顔してるな」
「そ、そんなこと、ないですけど、さっき……」

「やめといたほうが身のためだぞ」
「へっ?」

 部長は声をひそめて囁いた。
「こんな時間から俺に抱かれてみろ。お前、明日、まともに仕事なんてできなくなるよ」
 そう言って、またニヤッと口の端を歪めた。

「……」

 わたしの顔、蛸どころか、熟したトマトぐらい赤くなってる、絶対。
 もう、血が上りすぎて、卒倒しそう。
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