恋に異例はつきもので
*** 
 
「辻本と付き合うことになった」
 告白の翌日、部長はほんの少しのためらいもなく、部のみんなの前で、交際宣言をした。

 めずらしく全員そろっていて、みんな拍手をして祝福してくれた。

 米川さんは「そうなると思ってたけどね。99%の確率で」とうそぶいた。
 
 その翌週、わたしたちは誰に憚ることなく、1週間の有給を取って、彼の別荘を訪れた。

 海辺のリゾートマンションで、広い窓から湘南の海が一望できた。

「うわー、すごい」

 部屋に入るなり、大興奮で窓辺に寄っていくと、後から来た部長はわたしを背中から抱きしめた。

「花梨……」
「部長……」
「プライベートのときは部長はなしだ」
「じゃあ、〝彰ちゃん〟にします?」
「こいつ」

 彼はわたしをくるりと自分の方に向けると、噛みつくようにキスしてきた。
 キスされたままでわたしは言った。
「じゃあ、彰吾さん」
「それでいい」

 そういうと彼は、今度は優しいキスをくれた。
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