恋に異例はつきもので
「手伝おうか」
 沙織先輩だった。

「先輩〜」

「こら、就業時間内にそんな情けない顔しない。いつクライアントが来られるか、わからないでしょう」

「だって、やってける自信ないです。あの鬼、いえ、木沢部長の下でなんて」

「まあ、昨日みたいに、多少、いや相当難ありだけど、根はそんなに悪い奴じゃないし。それに彼の下で働けばものすごく力がつくはず。大丈夫。花梨ならついていける」

 いや、いくら沙織先輩にそう言われても苦手なものは苦手。
 でも、いつまでもグズグズ言っているわけにもいかない……
 会社勤めをしてる人間の宿命だ。

「はい。なんとか頑張ってみます……」

「いつでも相談に乗るから、遠慮なく言ってね」

 やっぱ沙織先輩、優しい。
 忙しいのに、わたしを気にかけてわざわざ声かけに来てくれたんだ。
 
 涙が出そう……
 ますます、ここから離れたくないよー。
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