恋に異例はつきもので
 だけど、なんでこんな時期に。
 しかも、異動になったのはわたしだけだし。

 異例すぎるって。

 も、もしかして、これっていわゆる肩叩きってやつ?
 でも、まだ入社して4年だし、大きなミスした覚えもないんだけど……

 重い荷物を持って、どんよりした気分で廊下をとぼとぼ歩いていると、前からずんずんとこちらに向かってくる人影が。

「何、辛気臭い顔してる。辻本花梨」
「わ、鬼……木沢部長」
「ほら、さっさと歩け」
「はい……」

 部長はわたしの手からファイルを詰めこんだ紙袋を奪いとると、大股で廊下を進んでいった。
 迎えに来てくれた?
 まさか、そんなわけ、ないよね。

 戸惑っていると、コンパスの違いで差がどんどん開いていく。
 わたしはあわててその背中を追った。
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