恋に異例はつきもので
 へえ、意外。

「まあ、さすがに部長はお茶出しはしないけど。お客さんがビビるだろう。あの人がカップ差し出して『どうぞ』なんて言ったらさ」
そう言って、米川さんはくすっ笑った。
 たしかに……

 でも、あの部長が仕切ってるんだから、てっきり昭和体質なのかと思ってた。ちょっと意外。

「だいぶ戸惑ってるみたいだね」
「そりゃそうですよー。朝、会社に来てみたら、今日中に異動しろって言われて、なんの説明もないまま、本を目の前に積まれて、読んどけですから」

 はっはっ、そりゃそうだ、と米本さんはまた楽しそうに笑った。

 とてもそんな楽しめるような心境じゃないんですけど、こっちは。

「なんで異動になったんだろう」
独り言めかして呟くと、えっ、と米川さんが意外そうな声を出した。
「何も聞いてないの?」
「何にもって?」
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