恋に異例はつきもので
 昨年、ネットニュースで会社を継いだのが宗一郎さんと知って、驚いた。
 家業を継ぐ気はないんだと、いつも言っていたから。

 彼と出会ったのは大学1年のとき、軽音のサークルで。
 落ち目の会社とはいえ社長令息。しかも、その出自を裏切らない正統派イケメン。
 サークル中の女子全員、彼に憧れていたといっても過言ではない。
 もちろんわたしもそのなかのひとりだった。

 だから宗一郎さんから飲み会の帰りに「付き合ってほしい」と言われたときは思わず「ドッキリじゃないですよね」と念を押したほど。
 なんでわたしなんだろうって本気でわからなかった。

 そのころの(いや、今もあんまり変わってないけど)わたしはまったくイケてなかったし。
 地方出身丸出しで、今どきの女子感なんて、ひとかけらもなかったと思う。
 
 でも、宗一郎さんは言ってくれた。
「きみの素朴さとよく笑うところに惹かれたんだ」と。
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