恋に異例はつきもので
 彼はわたしをとても大切にしてくれた。
 誕生日やクリスマスには、わたしにはもったいないほどの高級ブランドのバッグや洋服をプレゼントしてくれたり。
 それに素敵なカフェやレストランにもよく連れていってくれたり。
 友達には「いいな。玉の輿、決定じゃん」とやっかみ半分、よくいじられた。

 でも付き合いが長くなるにつれ、満たされない気持ちが心の底から泡のようにぷくぷくと浮かびはじめた。

 共働き家庭で育ったわたしにとって、パートナーとは〝対等〟であることがあたりまえだった。
 でも彼にとって、自分の彼女は〝庇護〟するもの。
 着る服も行く店も選ぶのはいつも彼。そこにわたしの意思の入る余地はなかった。

 そして大学4年のわたしが就職活動で悩んでいたとき。
「就職なんてしなくてもいいんじゃない。僕のところに嫁いでくればいいんだから」と、まるでわたしの悩みを、どっちのケーキにしようか迷っているぐらいの軽さだと受け止めた。
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