恋に異例はつきもので
「よし」
 彼は大きく頷くと、机に置いてあった紙袋を渡した。
「ほれ、土産だ。給湯室においとけばみんな適当に食うから」

 そう言うと、もう用なしとばかり、パソコンに目を移した。

 ほんとにこの人、どこまでマイペースなんだろう。
 席に戻ろうとしたら、部長が急にこっちを向いた。
 もう、びっくりするって。

「辻本には俺と一緒におもちゃ屋の『ヤマモト』のブランディングを担当してもらう。来週の月曜の午後、顔合わせに行くから心積りしておいてくれ」
「はい。わかりました」

 わたしは一礼して、その場を後にした。

 ああ、やっぱり。米川さんの予想通り。
 まさかこんな形で再会することになるなんて。
 いったいどんな顔で宗一郎さんに会えば……

 ふーっとわたしは大きなため息をついた。
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