恋に異例はつきもので
 けれど、一難去ってまた一難というか。

 駅に着いてみると部長は見るからに不機嫌そうな顔つきで駅舎の壁に寄りかかって、煙草を(くゆ)らせていた。

 えっ、怒ってる?
 でも、先に行くって言ってくれたのは部長だし……

 すみません、遅くなりましたと言おうとしたら、部長が先に口を開いた。

「あの社長と知り合いだったのか」
「はい。大学の先輩です」

 部長はふうーっと煙草をふかすとわたしの顔をじっと見た。

「で、元カレだろう?」
「えっ?」
「お前らの態度を見てたらわかる」
「そ、そんなことなかったと思いますが」
< 41 / 110 >

この作品をシェア

pagetop