恋に異例はつきもので
 あー、もう!
 この間、ちょっとでも見直したなんて思って、ほんと、損した!!!

 わたしは彼の前に回って思い切り睨みつけ、強い口調で言い返していた。
「ご心配なく! そんなことにはけっしてなりませんから!」

 部長は肩をすくめるだけで、何も言わない。
 でも、どうせ口だけだろうってその表情が言っている。

 もう! なんか、腹の虫が治んない!
 完全に頭に血がのぼった。

「痛ぇ!」
  思わず蹴りだした足が、部長の向こう脛をヒットしていた。
 
 でも……
 絶対、謝らないから。
 絶対、部長が悪い。

「ったく、なんて奴だ、お前は」
 あきれ顔でそう言うと、すたすたと歩きだした。

 それから、わたしたちはほとんど会話を交わさないまま、会社へと戻った。
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