恋に異例はつきもので
 いや、あの……

 軽く受け流してくれれば答えようもあるけど、そんなまともに返事されると、どう返せばいいのか、ちょっと困る。
 そんなことないです、って言うのも、部長に好かれたいですって告白してるみたいだし。でも、黙ってれば部長の言ったことを肯定してるみたいだし。

 うわー、どう答えればいいんだろ?

 そのとき、思わぬ救いの手が差し伸べられた。
 なんとも言えない微妙な空気を切り裂くように、エネルギッシュなヒーローもののアニソンが流れだしたのだ。

「すいません。ちょっと失礼」
 ふところに手をやりながら、米川さんは席を外した。

 えっ、今の米川さんのスマホの着信音なんだ。
 イメージと真逆。あとでイジッたろかな。

 でも、ふすまの向こうから、それどころじゃなさそうな深刻そうな声が聞こえてきた。
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