恋に異例はつきもので
 米川さんは、見送るわたしたちに、すみません、悪いね、と言いながら心配そうな様子で店を出て行った。

 ふー、たいしたことがなければいいけど……
 わたしはそのまま手洗いに寄り、部長よりも遅れて部屋に戻った。

 ふすまを開けると……
 さっきまでのあわただしさが嘘のように、小座敷はしーんと静まり返っている。
 部長は追加したお酒を手酌で飲んでいる、いや、呷《あお》ってるといったほうが。
 ペース早くない? ちょっと、目、坐ってるようにも……

 このまま帰っちゃおうかな。わたしも。

 いやでも……
 せっかく米川さんが設けてくれたこの機会を無駄にするわけには。
 とにかく、一言、謝らなきゃ。
< 50 / 110 >

この作品をシェア

pagetop