恋に異例はつきもので
 でも、彼がその後でとった行動は予想にまったく反するものだった。

「すまなかった」
 わたしが顔を上げると、彼も深々と頭を下げていた。

「いや、謝るのは俺のほうだ。なんであんなこと言っちまったのか。ずっと悪いことをしたと思っていた」
 そう言うと、もっと深く頭を下げた。
「それなのに、つい意地をはって今日まで謝りもしないなんて、最低な奴だな、俺は」

「部長、もう頭を上げてください。わたしのほうこそ、もう部長に愛想をつかされたかと思ってました。すぐに頭に血が上ってしまって、立場もわきまえず言いたい放題言ってしまって」

 わたしもすみません、ともう一度、頭を下げた。
 そして、顔を上げたとき、ほぼ同時に部長も顔を上げた。
 ばっちり目が合った。

 そして……
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