恋に異例はつきもので
 まったく思いがけない言葉にじわじわと喜びが込み上げてくる。

 部長がわたしを見つめている。
 こんな優しい眼差し、できる人だったんだ。

「期待してるぞ」
「はい」

 それから、部長はふっと視線を外して窓のほうを見て、小さな声で何かつぶやいた。

「米川の言ったこと、当たってんのかもな」

「えっ」
 よく聞こえなかったわたしが問い直すと、何でもないと言って、部長はグラスに手を伸ばした。
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