恋に異例はつきもので
「えっ?」

 部長はひとりじゃなかった。
 なぜか、小学生ぐらいの女の子と手を繋いでいる。

 な、なんで?
 たしか結婚はしてないはずだけど。

「ああ、辻本。すまんな、急に。香穂、お姉さんにあいさつしなさい」
「こんにちは」
「こ、こんにちは」

 小学3、4年ぐらいの、華奢で可愛らしい顔立ちの女の子だった。
 肩まで伸びた髪を、何やら複雑な編み込みが施されたハーフアップにして、首回りと袖口にフリルをあしらった、うさぎかなにかのキャラクターが書かれている薄紫色のトレーナーに黒い細身のスパッツを着て、小さなポシェットを下げている。

 どことなく、部長に似ているような……
 じ、じゃあ、隠し子?
 でも、隠し子だったら、わざわざ部下に会わせたりしないよね。

 彼女の正体をつかめず、目を丸くしていると、その女の子、香穂ちゃんは部長を見上げて、衝撃的な一言を放った。
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