恋に異例はつきもので
「おっと」
 そのとき、おぼつかない足取りで歩いていた男の子が部長の目の前で転んだ。

 2歳ぐらいかな。一瞬、何が起こったのか分からないっていう顔をしたあと、突然、ぐわっと口を開けて、大泣きしはじめた。

 すると部長は、すっとその子を抱きあげ、背中をさすってあやし始めた。

「ほら大丈夫だ。もう痛くないだろう」
 男の子はすぐに泣き止み、安心しきった顔で部長に体を預けた。

 わ、すごいな。部長。
 わたしの顔も思わずほころぶ。
 子供に好かれる人なんだ、部長。

 なんか、こういう場面に触れると、わたしのなかの彼が、どんどん更新されていく。

 そして、ごくごく自然に、ふわっとある考えが頭に浮かんできた。

 こんな人と一緒に子供を育てられたら幸せだろうな……と。
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