恋に異例はつきもので
香穂ちゃんが訊くと同時に、お母さんらしき人がやってきた。
「すみません。ちょっと目を離したらいなくなってしまって」
「いえ」

 部長が母親の手に男の子を渡そうとすると、男の子はイヤイヤするように首を振る。
 その様子を見ていた香穂ちゃんがポツっとつぶやいた。
「明もさあ、彰ちゃんに抱っこされんの、すっごい好きなんだよね」
「そうなんだ」

 香穂ちゃんはわたしの手をひっぱり、見上げてきた。
 すっかり打ち解けてくれたみたいだ。

「ねえ、花梨お姉さん。あっちの『お人形の町』行きたい」
「うん、一緒に遊ぼっか」

 香穂ちゃんは嬉しそうに「うん」と頷いた。
< 69 / 110 >

この作品をシェア

pagetop