恋に異例はつきもので
「おう」
 悪びれる様子はまったくない。
 鬼沢は小さく手をあげて、沙織先輩のところにやってきた。

「こんなところで、何、派手にやらかしてんのよ」

 うわ、さすが沙織先輩。鬼沢相手にどうどう渡り合ってるって、あたりまえか。同期なんだから。

「飲み屋で二言、三言、口きいたらあっちが勝手についてきて、お前みたいなネジがゆるんだような女と寝る気はないと言ったらブチ切れた」
「呆れた。もう、いい年なんだから。いいかげん落ち着けば」

 沙織先輩は腰に手を当てて、鬼沢を睨みつけた。

「おお、怖え。女も30すぎると怖いもんなしだな」
「何言ってんのよ。この、ハラハラ男」

「なんだ、そのハラハラってのは」

「パワハラ、セクハラなんでもござれの化石燃料級に時代遅れな男のこと!」

「化石だったらそっちのことだろうが。そのうち、どんな野郎にも相手にされなくなるぞ」

 
< 7 / 110 >

この作品をシェア

pagetop