恋に異例はつきもので
 扉が閉まったとき、香穂ちゃんがつないでいた手を引っぱってきた。
「なあに?」わたしは身をかがめた。
 すると香穂ちゃんはわたしの耳元で、こそこそっと訊いてきた。

「花梨ちゃんは彰ちゃんの彼女?」

 わたしはぶんぶんと頭を振って答えた。
「ち、違うよ。同じ会社で働いてるの。わたしは木沢さんの部下よ」
「お仕事お休みの日なのに来てくれたの?」
「うん。でも来てよかったよ。香穂ちゃんに会えたから」
「香穂も! 彰ちゃん、花梨ちゃんみたいにお人形遊びなんてしてくれないし」
「でも部長、コマ上手だったね」
「そうだったね」

 香穂ちゃんは部長に買ってもらったコマの袋を開けて、嬉しそうにのぞいた。

「また香穂ちゃんに会いたいな。明くんにも会いたいし。部長にお願いしておくね」
「あたしもママに言っとく!」
 香穂ちゃんはわたしの手をぎゅっと握ってきた。
 その彼女の髪を、わたしは優しく撫でた。
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