恋に異例はつきもので
第8章 パーテーションの陰で
しかし……
あの穏やかで優しい部長は、やっぱり『キンダーラント』が見せた、ただの幻だった。
翌週の水曜日。
「ぜんぜんだめだ。やり直し」
またもや企画書をつき返される。
没になるのはもう3回目。
こういうところ、部長は本当に容赦ない。一切の妥協は許されない。
部長は書類から目を外し、シャープすぎる切れ長の目でわたしを見すえる。
「企画の意図が微妙にずれてる。たしかに環境に配慮することは、今の時代はずせない問題だが、『ヤマモト』が得意とするものはなんだ?」
「プラモデルです」
「だろ? だからただ木製の知育玩具をメインにするってだけじゃダメだ。もうそんなことは他のメーカーがやり尽くしてるしな。これまで培ってきた企業の特色を生かしてこそのブランド構築だ。もう一度、よく考えてみろ」
あの穏やかで優しい部長は、やっぱり『キンダーラント』が見せた、ただの幻だった。
翌週の水曜日。
「ぜんぜんだめだ。やり直し」
またもや企画書をつき返される。
没になるのはもう3回目。
こういうところ、部長は本当に容赦ない。一切の妥協は許されない。
部長は書類から目を外し、シャープすぎる切れ長の目でわたしを見すえる。
「企画の意図が微妙にずれてる。たしかに環境に配慮することは、今の時代はずせない問題だが、『ヤマモト』が得意とするものはなんだ?」
「プラモデルです」
「だろ? だからただ木製の知育玩具をメインにするってだけじゃダメだ。もうそんなことは他のメーカーがやり尽くしてるしな。これまで培ってきた企業の特色を生かしてこそのブランド構築だ。もう一度、よく考えてみろ」