恋に異例はつきもので
 お酒が入ってることもあって、2人の言い合いはエスカレートし始めた。

「せ、先輩。行きましょう。注目集めてますよ」
 遠慮がちに声をかけると、木沢ハラハラ彰吾はわたしに視線を移した。

「明日、面白がって会社で言いふらすなよ、辻本花梨」

 そう言い捨てると、じゃあなと一言残し、去っていった。

 えっ?
 な、なんで?
 なんで鬼沢がわたしのフルネーム、知ってるの〜⁉︎

……思えばこれが、受難の日の訪れを告げる前触れだったのだ。

 
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