恋に異例はつきもので
 夢中でパソコンに向かっていたら、ことん、と机にコーヒーが置かれた。
「そろそろ上がれ。終電、逃すぞ」
「ありがとうございます」

 あっ、ミルクと砂糖も入ってる。すごい。
 もう、部長ったら、気が利く。
 あー、疲れた脳と身体にこの甘さが染みわたる。

「土日は一緒にいてやれないが」
 隣の席でコーヒーを飲みながら、部長が言った。
「もう大筋は固まったので大丈夫です」

「なかなか大掛かりなプランになったな」
「すべて実現させることは難しいかもしれませんね」

「ああ、だが子供にとって、好奇心を存分に満たせる場所は、絶対に必要なものだ。ひいてはそれが『ヤマモト』再生の鍵になる。俺たちはそれを信じて、少しでも実現の方向にもっていけるように力を尽くすだけだ」
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