恋に異例はつきもので
 もう……
 だいぶ前から気づいていた。

 あの口の悪さは彼流の照れかくしだっていうことに。
 本当は、繊細で優しい心根の持ち主だということに。

 そして、そんな彼が、もうどうしようもなく好きになってしまったということに。
 
 でも、告白するつもりはなかった。
 だって、今のわたしでは、とてもじゃないけど部長と釣り合わないから。

 それに、今日、痛いほどわかってしまったし。

 彼にとって、わたしはただの部下。
 それ以上の何者でもない。
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