恋に異例はつきもので
***

 そうして、土日も休日出勤して、ようやく草案をまとめ上げた。

「ご苦労さん。明日までに目を通しておく。今日は早く帰って休め」
「はい。お願いします」

 実は、ほんの少しだけ期待してた。
 彼の態度や話しぶりに、何か今までと違うものを感じるかと。
 でも、何もない。
 今までとまったく同じ。

 そりゃそうだよね。
 あーあ。
 わたしは椅子の背に身体を預けて、大きく伸びをした。

「お疲れさまです」
 定時になり、わたしは米川さんと坂口さんに声をかけ、オフィスを後にした。

 振り返って部長の席を見たけれど、彼はいなかった。
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