恋に異例はつきもので
 そうだよね。
 あのふたり、あれだけ遠慮なく言い合えるほど仲が良かったし。
 今まで気づかなかったなんて、鈍感すぎるって。

 沙織先輩と部長なら……それこそ、非の打ち所がない、完璧なカップルじゃない。

 良かった。この前の夜、勢いで告白しなくて。
 だって、実力も容姿もなにもかも、笑っちゃうぐらい敵わない。
 沙織先輩には。
 
 もう今日はビールをがぶ飲みして寝ちゃうしかない。
 酔っぱらって、思いっきり泣いて、あきらめよう。
 どう考えても叶うはずがないんだから。

 そう思ってはいたけれど……
 わたしの心はそう簡単には浮上しなかった。

 それぐらい、わたしは部長が好きになっていた。
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