恋に異例はつきもので
第9章 自爆覚悟の告白の末……
「心、ここにあらずだね」

 東京駅に近いホテルの最上階のイタリアンレストラン。
 わたしの目の前にいるのは、ネイビーのジャケットにエクリュのパンツをスマートに着こなしている宗一郎さん。
 会社に電話が来て、食事に誘われた。

 今日は仕事を離れて、昔の知人として積もる話がしたいと。

 先週、約束の草案は提出していた。
「アイデアは気に入ったけど、実現可能だと思えないな」
そう言って、宗一郎さんは最初、難色を示した。
 けれど、部長とふたりで企画の意図を熱弁し、最後にはこの線で会社にかけてみると、了承してくれた。
 
「昔はデザート選ぶとき、生きるか死ぬかっていうぐらい、ものすごく真剣な顔してたのに」
 宗一郎さんは思い出し笑いしてる。

「ごめんなさい。最近、ちょっとショックなことがあって」 
 わたしはまだ失恋ショックから立ち直っていなかった。

 仕事がひと段落して気が抜けたこともあったかもしれないけれど。
 ますます落ち込みは激しくなっていた。
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