恋に異例はつきもので
「宗一郎さん……」
「今日もあわよくば、口説いてヨリが戻せたらって、ちょっとは思ってたんだけど」

 それから、ふっと小さく笑って言った。
「まさか、他の男に告白しろって、花梨の背中を押すことになるとはね」
「ごめん……なさい」

宗一郎さんは明るい声で言った。
「いや、困らせるつもりで言ったんじゃないよ。だから、僕もちゃんとはっきりさせてほしいんだよ。じゃないと、諦めきれないからさ。花梨のこと」
「うん、わかった」

「すっきりと振られてくることを期待してる。そのときは僕が下心込みでたっぷり慰めてあげるから」

 わざとおどけた調子で、宗一郎さんは言った。
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