DAYS -静かに積み重ねた私たちの日々-
【番外編】少年Hの憂鬱



ホント、イヤんなっちゃうよなあ。





「ねえ沼くん、数学のこの問題わかる?」


「ん、どれ?」


ノートを開くと相原がじっと覗き込む。長い睫毛とサラサラの髪は2年前
から変わらない。
相原とは中学2年のときに同じクラスになって、それ以来の付き合いだ。
目立つタイプの女の子ではなかったけれど、いつもニコニコしていて明るい
相原に密かな恋心を寄せていた男は俺を含めてけっこういたはずだ。
それが3年になるとクラスが分かれ、それだけでも残念なのに神様は更なる
刺客を送り込んできた。


そう、あの男だ。


「希ー、メシ食いに行こ!」


勢いよく教室の扉が開いて、現れたのはもちろん西浦だ。
西浦は3年のときに相原と同じクラスになった。コイツは同じテニス選手と
しての実力はまあ確かに認めるが、それで女の子たちにチヤホヤされる
こともあって相原と会うまでは1人に執着したことなんてなかったし、
たぶん相原のように清純派な女の子には興味ないだろう、と思ってた。
同様に相原も西浦のようなノリの軽い男なんて見向きもしないだろう、と
俺は高をくくっていた。なのに秋が深まる頃には、西浦と相原の間には俺
でもわかるくらいの微妙な空気が流れていた。それからもまあいろいろ
あったらしいけど、卒業式の後にコイツは相原と手を繋いで俺らの前に
現れて、



『やっと希が俺のモノになりました!』



とかわざわざ報告してきやがった。


高等部に進学してせっかくまた相原と同じクラス、それも隣りの席になれた
っていうのに、いつも気付くとこの脳天気男が連れ去ってしまうんだ。今日も
話の途中で割り込んできた西浦の無礼を目配せでいつもごめんね、といいつつ
相原は西浦と一緒に教室を出て行った。


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