君がいないと
目を覚ましておいしそうな匂いがリビングからしない時、僕、ウィリアム・ホワイトはこの広い屋敷の中を歩いて同居人であるビアンカ・キャメルを探してしまう。今日もそうだ。

「ビアンカさん、今日もいない……」

広々としたリビングに行くと、テーブルの上に置き手紙が残されていた。そこには綺麗な字で、「タルトタタン、作っておいたからよかったら食べて。あと、棚のチェリーボンボンも食べていいよ」と書かれている。

どこか張り詰めた空気のキッチンの冷蔵庫を開けると、置き手紙に書いてあったようにおいしそうなタルトタタンが作られている。仕事に出る前に無理して焼いて行ってくれたんだろう。

「タルトタタンより、ビアンカさんの顔が見たかった……」

そんな女々しいことを言いながら、僕はその場に座り込んでしまう。

いつもはビアンカさんか僕が料理をするキッチンには誰もいなくて、窓が開けられていないカーテンは靡くことはない。それがとても寂しい。
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