君がいないと
リビングを見渡せば、ビアンカさんの整った横顔、綺麗な栗色の髪、赤く染まった頬、鼻筋を思い出してしまう。

「ビアンカさんなんて、嫌いだ」

決して口にすることができないその言葉を心の中で呟き、僕は切なく鳴る胸に手を当てた。



ビアンカさんとの出会いは、本当に偶然だった。

僕は小説家として都会で執筆をしていた。でも、都会の人や車のうるささに嫌気がさし、この自然豊かな地域に屋敷を持っている親戚に「屋敷に住ませてほしい」と頼んだんだ。

親戚は許可してくれたのだが、数少ない荷物を手に静かな屋敷に引っ越すと、同じ日に大量の荷物を持った栗色のショートカットの女性が引っ越して来たんだ。これがビアンカさんとの出会いだった。

どうやら、ビアンカさんは親戚の友人らしく、僕と同じようにこの屋敷に住ませてほしいと頼んで許可をもらったらしい。ダブルブッキングというやつだ。

同居人がいるなんて執筆に支障が出る、そう思った僕はすぐに引っ越そうとしたのだが、彼女から「ルームシェアをしない?」と提案されたのだ。
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