町娘は王子様に恋をする
はじまり
 みんなの王子様に、恥ずかしながら聞いてみたことがある。

「私の印象って、どうですか?」

 学生時代のちょっとした下心まじりの疑問。慕う気持ちが何処寄りなのか自覚しているからこその、確認でもある。
 落胆しないための言い訳はそれなりに用意していた。用意周到。だって、知り合ってからこれまでだって隣にいる女性が替わるがわるでとっかえひっかえなところを見ていると、不安になるから。

「宇佐見の? そうだなあ、じゃあまあ巷で“王子(笑)”と呼ばれている俺から見て……宇佐見はお姫様っていうよりは町娘かなあ……」

 印象を求めておいてなんだけれど、それは平凡ということでよろしいでしょうか。
 そのあとも羽柴先輩は続けて何かを言っていたけれど、正直ぼんやりとして聞いていなかった。適当に打った相槌に、先輩はどこか肩透かしを食らったような顔。ええっと、ごめんなさい、私が振った話なのに、返事を聞き流すなんて何たることだろう。
 でも、ちょっと意識がふらっとしてしまうくらいには、残念だったみたい。がっかりしなくていいように、言い訳まで考えていたのに。やっぱり私は先輩の事が、だらしがないと分っていても、好きだった。

 じゃあやっぱりこの想いは、私の中だけにしまっておかなきゃならない。
 大丈夫だ。伝えられなくてもいい。もともと片想いだと、そんな思いを抱えた人はたくさんいると、知っていたじゃないか。

 だって、貴方は。
 特にこれといって秀でたものも特徴もない、ただの後輩の私を。
 友人として、近くに置いてくれた。
 僥倖だったと、笑え。用意していた言い訳がおおいに役に立つというものだ、私。
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