コンチェルトⅡ ~沙織の章

智之の長女の 絵里加も 樹が大好きだった。


絵里加が “ パパ ” と “ ママ ” の次に覚えた言葉は、

“ じいじ ” でも “ ばあば ” でもなく “ タッ君 ” だった。
 

「タッ君、いつも 絵里ちゃんと 遊んでくれてありがとう。」

樹の後を 付いてまわる絵里加を 樹は 優しく手を引く。


麻有子は 樹の頭を 撫でながら言う。
 

「だって 絵里ちゃんのお手々 こんなに 小さいんだよ。だから 僕が守ってあげるんだ。」

絵里加の 手を取って 樹が言う。

 
沙織は 優しい笑顔で 樹を見ていた。
 


紀之が教える 優しさを 樹は ちゃんと理解している。

優しくすることで みんなに 求められる。


こんなに小さくても 樹は知っている。


我儘を言って 自分を通すよりも みんなに 慕われる方が 幸せなことを。
 








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