コンチェルトⅡ ~沙織の章

絵里加が 1才を過ぎた頃 
 
「もう一人 子供作ろうか。沙織 女の子ほしいだろう。」

夜 ベッドの中で 紀之は言う。


沙織は 驚いて 紀之を見つめる。


紀之は 絵里加を 可愛がる沙織を 気使っていた。
 


「子供は タッ君とカッ君で 十分だよ。二人とも 可愛いから。紀之さん 女の子 欲しいの?」

沙織は 紀之に聞く。
 

「俺は 男兄弟だから。娘がいても どう接していいか わからないよ。」

と紀之は 笑う。
 

「出産、 苦しいし。それに 私達の子供 何人産んでも 男の子のような気がする。」

沙織も 笑いながら言う。
 

「えー。それじゃ おそ松君でしょう。」


と紀之も笑う。


「6人 男の子産んだら 私 ボロボロになっちゃうね。」

沙織は 声を出して笑う。
 

「俺 女の子は 絵里加くらいの距離で 丁度いいかな。」


ひとしきり 笑った後で 紀之は言う。
 

「うん。私も。責任ないし。良いとこ取りだよね。」

沙織が言うと 紀之は
 
「ありがとう。」

と言った。


感謝するのは 沙織の方なのに。

紀之の優しさに 沙織の胸は 甘い熱さが 満ちてくる。


そっと 紀之に寄り添うと 紀之は 熱く沙織を 抱き寄せた。
 


紀之は 照れ屋で 甘い言葉は 言わない。


でも 出会った頃と 同じように 沙織を求める。


だから沙織は 女性らしさを 失わずにいられた。


求められる安心感が 更に 沙織を磨いていく。



沙織は 若い頃よりも ずっと美しくなっていた。
 
 










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